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キモ

伝統職人技の粋に触れて

繊細な〝江戸銀器〟鍛金のの技法に挑戦!

来日中は、まるで分刻みで多忙なスケジュールをこなすキモ画伯。時間のあるときは、大型書店で創作へのインスピレーションを高めてくれる写真集などを物色したり、おいしい日本食を楽しんだり短い滞在時間を存分に満喫してハワイに戻っていかれます。

今回はそんなキモ画伯のアーティスト魂を刺激するに違いない2つの場所にご案内してみました。

最初に訪ねたのは〝東京銀器〟の伝統工芸士、二代目光南こと石黒昭雄さんの工房です。

銀器とは、純度99%以上の平らな銀板を木槌や金槌で打ち出し、繊細な茶器や酒器、装飾品などに作り上げたもので、石黒さんが手掛ける〝江戸銀器〟は江戸時代初期に始まる手工芸技術。それまで特権階級しか触れることのできなかった貴金属工芸品が、町人文化が花開いていくなかで、次第に庶民でも楽しめるものになっていったのだそうです。

台に穿たれた穴に、ぴったりと合う金床をはめこみ、その上に銀板をあてがって、先端が細くなった鉄の槌で中心部から丁寧にたたいていきます。

作業開始から数分とたたずして、キモ画伯はすっかり作業に没頭。ほとんど言葉を発することなく、銀板をたたくことに集中しています。

中心部から周辺に向けて丁寧にたたき続けていくと、ぴかぴかに光っていた銀板の表面には細かい凹凸が広がり、渋い味わいが出てきます。こうして銀板を何千回もたたいて延ばしたり縮めたりすることで銀の粒子が小さくなり、器に強さと粘りが出てくるのだそうです。画伯の額にもうっすらと汗がにじみます。

キモ画伯がチャレンジしたのは、直径10センチほどの銀の菓子皿づくりです。銀器づくりにはいくつもの技法がありますが、今回は金属板を槌で何度もたたいて立体的な形にしながら文様を打ち出していく〝鍛金(たんきん)〟という方法で1枚の皿を仕上げていきます。

石黒さんにご用意いただいたのは、直径15センチばかりの円形の銀板。どっしりとした切り株のような作業


伝統工芸の技にひたすら「素晴らしい!」

全体をきれいにたたき終えると、続いて〝焼きなまし〟という工程です。槌でたたかれ最初よりも一回りほど大きくなった銀板にガスバーナーの火をあて、高温に熱します、これをゆっくり冷却すると金属に柔らかさが加わり、次の作業が行いやすくなるのです。


ここからは、石黒さんの技術をお借りして仕上げの工程に入っていきます。皿の形にくぼんだ木型に銀板を置き、その上に雄型と呼ばれる木型をはめこんで大きな木槌でたたくと、丸い銀板の周辺がきれいに立ち上がり、菓子皿らしい雰囲気が出てきました。

専用の器具で立ち上がりの高さに合わせて線を引き、ハサミで余分なところを切り取り、やすりで断面を整えれば完成です!

石黒さんの工房には、槌一本で打ち出されたみごとな香炉や急須なども展示され、一つひとつに「素晴らしい!」を連発していました。