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ミッシェル・バテュ2

  

  

和紙専門店を訪問 水墨画にもチャレンジ

 

続いての訪問先は、日本橋の小津和紙さん。江戸時代から350年以上続く和紙の老舗で、色々な種類の手漉き和紙や美術工芸用の特殊な和紙、書道用品などを扱っているだけでなく、和紙の手漉き体験をすることもできます。

画家として、さまざまな画材に親しんでこられたミッシェル・バテュ画伯も、和紙という素材にはあまり接したご経験がなかったそうで、店内のありとあらゆるものに興味津々。まずは和紙の触感を味わっていただくため、店内に設けられた試し描きコーナーで水墨画に挑戦です。

ちょっとした体験になれば・・・とご案内したものでしたが、ひとたび筆を手にすると、とたんにアーティストの魂に火が付いてしまうミッシェル・バテュ画伯。


スタッフも近寄れそうにないほど集中力を発揮し、わずかな時間で一幅の風景画を仕上げてしまわれました。

画材として初めて出会う 和紙の世界に深い関心

次に2階にある展示室「小津ギャラリー」へ。日本画や水墨画から現代的な作品まで、幅広い作品の展示が行われているスペースで、このときは〝自然界のすべてのもの「森羅万象」に感謝〟というテーマで、全市16枚の和紙に力強く描かれた現代書の大作が展示されていました。迫力に満ちた作品に、ミッシェル・バテュ画伯も「トレビアン!」を連発です。

実はこの作品、小津和紙店の紙漉きの担当者と学芸員の方たちによるコラボ展。紅星碑という中国紙の反故紙(一度使用した紙)を細かくし、和紙の原料と混ぜて再生した紙による作品展ということで、会場には楮(こうぞ)、三椏(みつまた)、雁


皮(がんぴ)などの和紙原料が置かれています。こうした植物の繊維から和紙ができているとご存知なかった画伯は、終始驚きの表情をみせていました。

 

また、中央区の登録有形文化財として保存指定を受けた古文書などを公開する「史料館」にも特別にお招きいただきました。

 

アーティストの本領発揮! 手漉き和紙体験

ミッシェル・バテュ画伯が小津和紙さんを訪れた一番の目的は、和紙の手漉き体験です。

一枚の紙が仕上がるまで約一時間半。お店の方の懇切な説明と指導のもと、画伯もまず紙漉きの手ほどきを受けます。

 

〝すあみ〟と呼ばれるすだれ状ものを張った木枠を和紙の原料が溶けた水槽にくぐらせて引き上げ、日本語で「いち、に、さん…じゅう」と掛け声をかけるように前後に10回振ることを数回。少しずつ和紙に均等な厚みをつけていく難しい作業なのですが、画伯はたいへん飲みこみが早く、あっという間にコツをつかんでしまいました。

続いて、枠から取り出し、まだ生乾きの紙の上に、色和紙や糸などを使って好きな模様をコラージュしていく作業です。

日本人だと、花びらの形などを淡く小さく散らすことが多いのだそうですが、ミッシェル・バテュ画伯は大胆な色づかいで和紙を重ね、さらに糸を上手に使ってカタツムリを描いていきます。ここは完全に画伯の独壇場。すっかり一人の芸術家の表情に戻り、一心不乱に作品づくりに没頭していきます。

 

コラージュが完成したら、その上にもう一度、薄く漉いた和紙を重ね、圧搾して水気を取り、板に張って乾かせば、さぁ完成です!

どうでしょう、この素晴らしい仕上がり!イーゼルにたてかけ、バックライトを当てれば、もはや完璧なアート作品です。

作品のテーマは「庭の野菜畑」。庭で見つけた風景をイメージしたものだそうで、お店の方も「日本人は薄くぼかした色合いで作品を構成されますが、こんなに大胆なモチーフと色づかいの作品は外国の方ならでは。日本人にはない感覚で、とても勉強になります」とコメント。

画伯ご自身も、「ここに一日中いたいくらい本当に楽しいわ!」と何度もおっしゃっていたほど。「初めてのことばかりで、とてもわくわくする体験でした。紙漉きで使った日本ならではの材料もとても興味深くて、今日の経験は私自身の創作活動にもいろいろな可能性を与えてくれたようにおもいます。」とおっしゃっていました。

ゆったりと休日を過ごしていただければ…とご案内した一日でしたが、思いがけず、アーティストとしての画伯の創作意欲に新しい灯をともすことにんったのかもしれない今回の東京散策。これからのバテュ画伯の作風に、もし何らかの変化があったら、それはこの日の体験ゆえかもしれませんね。