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ニッサン・インゲル

庭園、絵画、そして下町情緒

日本文化のさまざまな表情に触れる休日

徳川時代を代表する名庭園に「ゴージャス!」のため息

日本の文化にたいへん深い造詣と関心をお持ちのインゲル画伯。奥様の生まれ故郷であるフランスでの暮らしのなかにも、ちょっとした東洋趣味をスパイスのように利かせることがあるとおっしゃいます。来日中のニッサン・インゲル画伯を、江戸や東京の歴史に関わり深い場所にご案内してみました。


 まずお連れしたのが「六義園(りくぎえん)」(文京区本駒込)。元禄8年(1695年)、後に江戸幕府の大老にまで上りつめた柳沢吉保が、5代将軍、綱吉より下屋敷として与えられていた土地に、自ら設計と造営を敷きして造りあげた大庭園です。

万7000㎡の広大な園内には、総計6000本もの樹木が植えられ、訪れる人は四季折々で異なる風景を楽しむことができます。庭園中央には大泉水とよばれる人口の池が配され、あちこちに和歌に詠まれた名勝の景観が再現されているのも、優れた教養人としての吉保らしさにあふれています。


 

園内はどこから眺めても、まるで一幅の絵画のように完成された風景。散策路をそぞろ歩きながら、「ゴージャスの一言ですね」と画伯の感慨深そうです。「京都や奈良など、本格的な日本庭園には何度か訪れたことがあります。東京では、ホテルニューオータニの日本庭園が非常に美しい。でもこんなに大きくて素晴らしい庭園は見たことがありません。」

聞けば、フランスにも日本庭園にインスパイアされた庭園が少なくないとのことで、「日本の庭を真似て、池に鯉を放っているのを見たことのありますよ」と、楽しげにあちこちをご覧になり、散策の途上、園内の休憩所で大好物だとおっしゃる抹茶のアイスクリームを召し上がりました。 

下町情緒あふれる商店街で発見した和風の小鉢

 次に訪れたのは下町情緒にあふれる「谷中銀座商店街」です。

東京、台東区の西北端、JR日暮里駅から東京メトロ千駄木駅にかけて続く、いかにも庶民的な商店街。小さいけれど活気あふれた昔ながらのお店がぎっしりと並び、懐かしさいっぱいの光景が広がっています。

千駄木駅の道灌山口に近いほうから入ると、寝具店や鮮魚店、お惣菜屋さんなどがずらりと軒を連ねる商店街に突入。夕方近い時間帯、夕食の支度でしょうか、お買い物に出てくる近隣の人たちで通りはなかなかの賑わいです。

 鮮魚店の店先にきれいに並べられた貝や魚にしばらく目を止めていた画伯は、「うなぎ蒲焼」と大書きされた白い幟(のぼり)に注目され、「これは面白いデザインですね~」。


来日時の会食の席でも、日本酒や焼酎のボトルラベルの文字にことのほか関心を寄せておられるところをみると、ニッサン・インゲル画伯はどうやら墨書きされた日本の文字が面白いご様子です。しばらく行くうちに、画伯がはたと目を奪われたのが店頭に積まれた和風の小鉢です。お茶、海苔、和風小物や和食器を扱っている「金吉園」さんの店先でした。

「これはいいなぁ。すごく素敵だ。値段はいくらなんですか?」としきりに興味を示される画伯。

ひとつ8ユーロほどと聞き、2種類の色と幅の異なる縦縞の小鉢を4つお求めになりました。いまごろは、ご自宅でカフェオレ用のカップになっているかもしれませんね。

 

ニッサン・インゲル画伯はさらにティーバックの日本茶も買い求め、お店の方においしい煎れ方を教わってすっかりご満悦です。(この小鉢がよほどお気に召したのでしょう。画伯はこの日の最後にもう一度この店に戻り、さらに小鉢2つとお皿2枚を買い足されたのでした!)